を与える。
熱力学の教科書は、このような第2法則の同等性の説明にかなりの頁を割いている。さらに、たいていは、この説明の中に温度の概念と測定法とを紛れ込ませている。
我々の目的は、前章で導入した情報エントロピーと熱力学にでてくるエントロピー、あるいはクラウジウスが導入した上記の和とが、実際にどのように関係しているかを明らかにすることである。この旅の案内役となるのが、ボルツマンBoltzmannである。彼は、エントロピーSに関して、
という関係を発見した。ここで、W は、「状態の数」と定義される。Boltzmannのこの式を仲介役とすれば、熱力学の第2法則にでてくるエントロピーと、情報エントロピーとが実際にどのように関係しているかを理解することができる。
さらに次章では、この関係が量子力学や量子統計力学において、どのように引き継がれていくかを検証する。
2.1 熱力学のエッセンス
2.1.1 熱力学の法則
第0法則、物質の温度は定義できる。(〜1931年頃)
第1法則、エネルギー保存則。ある系の変化(過程)に伴う内部エネルギーの増大は、その変化の過程で吸収した熱と、なされた仕事の和に等しい。
-Newton力学に熱を導入してエネルギー保存則が成り立つようにした。
-熱と仕事は、変換可能であり、等価である(Joule)。
第2法則、最終結果が、同じ温度に保たれている熱源から仕事をさせられる熱(work heat)を取り出して、それをすべて仕事に変換するだけで、それ以外の変化は起こさないような過程は不可能である(Lord Kelvin)。
その過程の最後の結果が、ある温度にある物体から熱を取り出し、それより高い温度の物体に受け渡すだけであるような過程は不可能である。(Clausius)。