の積分の経路をたどる過程は、可逆的でなければならない。熱力学の変数のうち、全微分となる関数は、状態量propertyと呼ばれる。内部エネルギーは状態量であるが、熱も仕事も状態量ではない。状態量は、状態をあらわす変数である、温度、圧力、体積などと同じく、熱力学的な状態を記述する「変数」ではあるが、これらの変数が必ずしも「状態量」ではないことに注意されたい。

 

 

2.1.4 熱力学ポテンシャル

熱力学では、熱力学ポテンシャルと呼ばれる、さまざまな関数が定義されている。これらの関数の微分形式は、完全微分になっている。次によく使われる熱力学ポテンシャルを紹介しておく。最後は、微分形式をつくるのに選択した独立変数の組である。

 

エネルギーEnergy                

エンタルピーEnthalpy                    

自由エネルギーFree energy      

ギブスエネルギーGibbs energy   

 

上記の自由エネルギーは、ヘルムホルツHelmholtsの自由エネルギーともいう。同じく、ギブスGibbsエネルギーは、ギブス自由エネルギー、自由エンタルピーとも呼ばれる。

 

上記の微分形式の間を行き来するには、ルジャンドル変換を使う。それは、ポテンシャルの定義式に積としてでてくる2つの変数(上記の独立変数の組)、の微分をとる時、

             

であることに気をつければ簡単である。上記の組となっている2つの変数は、互いに共役conjugateな関係にあると言われる。

 

 これらの熱力学ポテンシャルを用いると、次のような表現ができる。

・孤立系では、熱平衡にある時、エントロピーが最大になる。

・温度と圧力が一定の系では、熱平衡にある時は、自由エネルギーが最低になる。

・温度が一定の系が外界になしうる最大の仕事は、自由エネルギーの減少量を越えない。

・温度と圧力が一定の系では、系が外界になしうる仕事は、Gの減少量を越えられない。

 

熱力学の対象となる系の巨視的な状態を表す変数である、状態変数state variableで使われる変数には、示量性extensive変数と、示強性intensive変数の2種類がある。前者は物質の量や大きさに比例するように変動する量であり、質量、体積、エネルギーなどが、その例になる。後者は、物質の量や大きさに依存しない量であり、温度、圧力、密度など