となる。もちろん等号が成り立つのは、可逆過程の場合である。この式は、クラウジウスの方程式と呼ばれる

 

           

 

の特別な場合になっている。ここでも、等号が成り立つのは、可逆過程の場合である。この和を循環過程でとり、熱源の数を無限にしていくと、和は閉曲線の沿った積分となる(  をみよ)。

 

2.1.6 Clausiusによる熱力学のentropy

 熱力学は、微視的な対象を多数含む巨視的な系の全体の状態を問題にする。例えば、同種の分子が多数集まった気体の状態は、気体の容器の体積、容器の壁面への圧力、温度などで特徴づけられる。それらの変数がある値をとったのが、巨視的な(熱力学的な)ある状態である。いま、2つの状態ABがあった時、Aの状態からBの状態への変化を考える。この時、BからAへの変化が、仕事や熱の受け渡しに関して逆の関係にできる時、この変化は可逆的(reversible transformation)であるという。Carnot cycleは、可逆的な変化で熱機関が運転される例である。

これらの概念をもちいて状態Aentropyが、

 

 

 

と定義される。ただし、上記の積分はOからAへの可逆的変換にそってなされなければならない。また、状態Oは、任意の基準状態であり、通常絶対零度が採用される。

 

 上記の式を天下り式に与えたが、その理由を説明する。すでに強調したように、熱力学の第2法則はさまざまに表現される。そこでエントロピーを用いない表現から出発すれば、エントロピーを定義する上記の式は、第2法則から導くべき対象になる。われわれは、むしろエントロピー概念によって第2法則を表現する。したがって、そのための仮定は、

 

熱の増分は全微分でないが、それに積分因子を乗じた分は全微分である。

 

という仮定である。そうであればある関数S が存在して、は全微分となり、その閉曲線にそった積分はゼロになる。