となる。ここで、は積分の定数である。一般にはもちろん温度に依存するが、かなり広い温度で一定()とみなすことができる。この領域においては、上の式の積分を簡単におこなえ、次の結果をうる。

 

          

演習問題として、いろいろな計算を試みる。

 

 

2.3 熱力学から統計力学へ

 

2.3.1 熱力学の中の確率的な要素

 巨視的な系を相手にする熱力学では、「確率」という概念が表にはでてこない。エントロピーも熱の流入流出に関する微分を完全微分にすることによって定義された状態量である。この時の積分因子(の逆数)が温度であった。しかし、クラウジウスによって最初に導入されたこのエントロピーには、情報エントロピーのような確率との関連が希薄である。それはどこに隠されているのだろう。ここで注目すべきは、熱と温度である。熱力学的の状態変数の中で、体積や圧力は、力学においても定義されうる量である。しかし、熱や温度は力学の概念には入っていない。だから、熱力学の中の統計的なあるいは確率的な要素は、熱と温度に隠されているに違いないという類推が働く。2つの熱源によって働く理想的な熱機関において成り立つ、

             

という関係は、熱と温度が双子のような概念であることを示唆している。

もうひとつ重要なことは、熱的平衡という条件である。熱力学の多くの物理量は、熱的な平衡状態においてのみ測定されたり、計算されたりする。多くの方程式も熱的な平衡状態の下で成り立つとされる。このことは、熱的な平衡にないような状態では、集団の統計とか、確率という概念をあてはめるのが、難しいことをも意味している。実際、温度も熱も平衡状態のある時、測定されやすく、それ以外の場合には、2つの平衡状態における値の差としてしか、把握できないことが多い。

 

熱力学の対象となる物理系は、膨大な数の小さな物体から構成されている。小さな物体の正体は原子や分子であるが、熱力学が体系づけられた19世紀においては、その実態は今日ほど明らかだったわけではない。ただ、どのくらいの数の小さな物体を相手にしているかということは、見当がついていた。例えば、熱力学でよくでてくる単一の成分(分子)