である、ということが、ボルツマンの原理(対応関係)を認めれば導かれることになる。

 

 

 

一般に、ある巨視的な状態に対応する力学的な(微視的な)状態は、いろいろある。それらの総数Wとし、それを可能な状態の総数で割るとその状態の出現確率がえられる。これにより、熱的な平衡状態は、微視的な状態の出現確率が最も大きいもの、すなわち「最も確からしく出現する」(巨視的な)状態ということができる。

 

2.3.3 ボルツマンの発想

Boltzmannの原理、つまりはクラウジウスの熱力学的エントロピーの確率的な解釈によって、熱力学のような巨視的な世界を記述する方法と、力学系という微視的な世界を記述する方法とが、対応づけられたことになる。熱力学のentropyがやはり確率事象と関係していることがこれで明らかにされた。それにしても彼はどのようにして、この原理に当たる式を思いついたのだろう。彼が実際に使ったのは一般の熱力学のエントロピーSではなく、分子運動論に出てくるHであるから、この疑問は、Hが確率的な表現と結びついていることを、どうして気がついたのだろうかということになる。分子運動論において彼は衝突の前後における変化を計算していると言ったが、このH

            

という形をしていた。ここでは、ある粒子の速度がとの間にある確率である(もちろんこれらはベクトル量であるが、議論の本質には関係ない)。この確率は完全気体に関して、すでにマックスウエルによって求められていた。この意味でボルツマンの仕事はマックスウエルの仕事を下敷きにしている。このH が衝突を繰り返していく過程で減少していくという結果が、容器に閉じ込められた完全気体が、孤立系として内部で微視的な衝突を繰り返しながら平衡状態に到達していく、エントロピーの増大過程そのものであると、ボルツマンは類推したのであろう。この類推が統計力学の礎石となるボルツマンの原理を導いたことになる。

 ところで、を情報エントロピーの定義、     

           

とくらべると、どうして

          

となるか、疑問が残る。

特別な場合、例えば、