ツマンの原理の式のを(したがって当然を)最大にするような分布であるということである。このことは、「巨視的な孤立系が熱的な平衡状態にあれば、エントロピーは最大になるる」ということの意味を微視的な視点から説明している。すなわち、そうした系の微視的な状態をしらべてみれば、それらはボルツマン分布をしているのである。

 

2.5 分配関数の計算

 分配関数 が計算できる系として、次のような系を紹介する。

 

理想気体とMaxwellの分布

調和振動子

Fermi-Dirac粒子系:金属の中の電子ガス

Bose-Einstein粒子系:

磁性体(スピン系)

 

マックスウエル分布Maxwell Distribution

 理想気体が、体積Vの容器に入れられた、(絶対)温度Tで熱平衡状態にある時の構成要素である、各気体分子を考える。簡単のためにこれらは、同一の質量の、古典的な粒子とする。1個の分子の運動エネルギーは、

 

 

となる。ただし、ここで、はベクトルである。気体が薄く、他の粒子とポテンシャル・エネルギーが無視できるとすれば、ボルツマン分布のエネルギーを運動エネルギーだけとした分配関数が求められる。これより、位置と速度を変数とした相空間を考えると、分子の速度の絶対値が、vv+dvである確率は、

   、 (体積要素は、

で与えられる。この分布による最も確からしい早さはである。なお、速度の各成分の分布は、正負対称のガウス分布(正規分布)となり、その平均はもちろんゼロである。この速度分布は、成分が複数ある理想気体にも適用できる。

 

例題。室温(300K)で平衡状態にある窒素気体の分子の速さはどれだけか。

解:窒素の分子量は28、これとアボガドロ数から、分子の質量は約4.6x10-23g.これから、確からしい速さは、約420m/secとなる。(Berkeley, 下、p.263