のために、Plankは、量子仮説の源になったプランク定数hを導入した。量子仮説は、多数の粒子からなる系のエネルギーが、連続ではなく、離散的(飛び飛び)なことを保障する。この保障は、位相空間を小部屋Cellに分割して状態数を数えるという操作を可能ならしめるものであり、統計力学の方法論の基盤となるものである。プランクがこの仮説を提唱したのは、ちょうど世紀の変わる、2000年であった。
熱力学は、実験と経験を基に思考を重ねて確立された体系である。巨視的な対象に関する議論であったのにも関わらず、20世紀に至ってもその価値は減じていない。それどころか、熱力学の第2法則は、宇宙論や生命の科学に関連して大きな関心をもたれている。Schrödingerが生命は負のエントロピーを取り入れているという意味のことを述べたのは有名である。また、現実の世界が推移する向きとしての時間と、エントロピー増大法則との関係は、研究者や哲学者の論議を呼んでいる。さらに、最近の超高速計算機の開発においては、消費電力を少なくすることが大きな課題になっている。ここでは、計算の物理的な課程における熱力学的な考察が必要である。さらに、熱力学で導入されたエントロピーの概念は、情報理論の中心概念となった。さらに、その後は、生物学への応用を意識した、非線形の数学理論、非平衡の熱力学・統計力学、複雑系の理論が生まれてきた。このように、熱力学、とくに第2法則は、まだ多くの挑戦課題の源になっている。