2.A 理解を深めるための例題と問題
例。強磁性体モデル
スピンが1/2であるN個の磁性原子からなる系を考える。各原子の取りうる状態は、スピンが上向きか、下向きかの2つである。この系は、十分低温では、スピン同士の相互作用で、その向きが互いに平行になるように揃うと仮定する。絶対零度では、スピンはすべて同じ向きになるとすれば、N個の系の可能な状態の数Wは1である。また、温度が無限大の場合は、スピンの向きは完全に乱雑になるから、可能な状態の数Wは、2N
で与えられるので、ボルツマンのエントロピーはとなる。一方、熱容量をもちいたクラウジウス流の熱力学のエントロピーによれば、
となる。これは、スピン相互作用の詳細、C(T) の温度依存性に関係なく、常に成り立つ。(Berkely統計物理(下)、p.235)。
熱力学を復習するための演習問題
熱量計:銅でできた重さ750gの熱量計に200gの水が入っていて、平衡状態にあり、この温度は20度Cである。この熱量計に、重さ30gの氷を入れ、熱量計を断熱壁で覆い、外部に熱が逃げないようにする。水の比熱は、4.18Jg-1deg-1、銅のそれを0,418Jg-1deg-1、氷の溶解熱を333Jg-1とする。氷の溶解熱は、0度Cで、氷を水へと溶かす時必要な熱量である。ここで、
(1) 十分時間が経過して、全部氷が解け水になってすべてが平衡状態に達したとすると、温度はいくらか?
(2) この平衡状態に達するまでの全体の系のエントロピーの変化はどれだけか? 単位をJ/degとして求めよ。
(3) 上記(1)の状態から、全部の水を再び最初の温度、20度Cに上げるには、どれだけの仕事(J単位)が必要か?
答え:(1)12.6度C,(2)、12.8J/deg、(3)9.4x10J
(Berkeley統計物理(下)、p.244、問題5.17)