なぜ第2量子化と呼ぶのか?

 第2量子化の方法を紹介している教科書は少なくないが、その方法のどこが第2量子化なのか、またなぜそのように呼ばれるのか、数の演算子あるいは生成消滅演算子との関係はどのような必然性にもとづいて導入されるのかを説明している本はほとんどない。

第2量子化とは、同種の多粒子系を計算するための近似法のひとつである。この手法を考えついたのは、ディラックである。第2量子化に関するこうした疑問を、ディラックの最初の発想に遡って答えているのが、朝永振一郎の「スピンはめぐる」の中の解説(第6話、pp.147-175)である。非常に教育的な解説なので、以下それを要約する。ディラックが光の場を量子力学的に扱おうとした1927年の論文で初めて発表された。この仕事はボゾンに関するものであったが、翌年、フェルミオンに関する理論もつくられた。したがって、第2量子化の方法はボゾン系かフェルミオン系かで、多少違うが本質的な話の筋は同じである。

 

 この方法では、まずハミルトニアンを有する1粒子系を考え、をシュレディンガー方程式、

 

          

 

満足する固有関数とする。ここで、ある1つの観測量(例えば)の固有関数で完全系をなすものを考える。そうすると他の任意の1粒子ベクトルは、の線型の重ね合わせとして表現できる。簡単のために、ここでは離散的な固有値を想定する。この1粒子系の基底関数によって、上のシュレディンガー方程式を満たす状態関数は、

 

         

1次線型結合として展開できる。ここで、展開係数に注目する。次に、こうした1粒子系のコピー(Gibbs ensemble)がN個ある系を考える。このコピー集団において、Gを測定しみると、その値は固有関数に対応したものになる。例えばに対応した固有値を与える1粒子系の数の期待値はは、

 

          

で与えられる。

ここで、の展開係数は演算子ではなく、普通の(複素)数(c数)である。しかし、