密度行列の意義
密度行列は状態ベクトル(波動関数)という概念を基盤として定義されている。しかしながら、物理系を記述する場合、波動関数としては扱えない統計性をもった系の状態を記述することができる。もちろん波動関数が求まるような問題では、密度行列もそれから容易に求められる。しかし、その逆は成り立たない。こういう意味で、密度行列は波動関数より広い範囲の物理現象を扱えるという利点がある。すなわち、多体問題や量子統計学では、計算に便利な道具であり、観測問題や量子情報では、概念を記述するための必須の概念ということになる。