ては、どれかの状態に収束するから、エントロピーは観測によって決定的に減少してしまうことになる。実際にそれによって、観測対象系のエントロピーが減少するなら、それを補うエントロピー増大が観測者側の系に起きていなければならない。この変化は突然起きることになっているが、実際には、ある時間の間におきている現象であろうと考えられている。エントロピー増大則はボルツマンのH定理とも関係している。その量子力学への拡張の問題もある。古典論でボルツマンを悩ませた批判は、微視的な世界が時間対称の(ニュートンの運動方程式)で記述されるのに、時間に関して一方向性をもったHの減少が活論されることである。シュレディンガー方程式は時間に関して対称であるから、この批判は量子力学にも受け継がれることになる。

 こうした問題はまだ決着がついているとは言えない。