これと双対のN-s個だけの部分系に関する密度作用素は、

 

      

で定義される。配位積分式表現では、

  

あるいは、座標をまとめて形で、

   

と書く。

 すなわち、s-粒子系の密度演算子では、残りのN-s系に関する積分によって平均化しており、N-s粒子系の密度演算子では、その逆の平均化を行っている。ここで、N粒子系の波動関数が、上記のシュミット分割の最初のデータ表のにあたり、双対のがそれぞれ縮約された密度演算子、にあたる。これらの演算子の固有値は負でなくかつ等しく、大きさの順に並べられる。したがって最初の波動関数は、これら2つの密度演算子の固有関数(ベクトル)の外積和で展開される。第5章の表記では、

 

        

 

しかもこの展開は途中で打ち切った時の誤差を最小にするものである。これが量子化学でいう自然軌道による展開Natural orbital expansionに他ならない。

 

 

量子情報におけるエンタングルメント

 密度演算子とシュミットの分割理論は、量子情報と量子計算ではとくに重要である。なぜなら、これらの理論では複合系Composite systemとその部分系の関係、さらにそれらの部分系の間の絡み合いEntanglementが重要な意味をもっているからである。いま、部分系からなる複合系の密度演算子をとすれば、部分系の密度演算子は、それぞれ

          

 

で与えられる。ただし、部分Traceは、の任意の2つのベクトルの任意の2つのベクトルによって、