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と書くことが出来る。これは長さが1で、一組の
によって方向(
、
との角度)を指定されたベクトルである。このベクトルは単位球面上にあるが、この球面をブロッホ球面Bloch sphereと呼ぶ。
すでに見てきたように量子力学には電子スピンや偏光した光子を始めとして、よく実験研究の対象ともなる2状態複合系が多数知られている。量子計算の基本となる系を2状態系と仮定することは、実際にそうした系を実現する手段をいろいろと考えることができることを意味している。また、そうした系に関する理論であれば、実験家に馴染みがあるから、興味をもってもらえるという利点がある。
量子演算と回路
量子状態をヒルベルト空間Hilbert Spaceの要素(元、ベクトル)と考えると、量子計算における具体的な演算操作は、それらの要素に作用する作用素(演算子)Operatorとなる。量子計算が扱う作用素はとくに、ユニタリ性(
)を満たす作用素に限定される。ユニタリ作用素による量子状態の変換をユニタリ変換という。したがって、量子計算とは、ユニタリ変換に伴う量子状態遷移を意味する。ユニタリ変換は、その定義からベクトルの内積(長さ)を変えない変換である。
量子状態に演算を施す操作は、量子回路Quantum gateによって実行される。そうすると問題は、演算に対応する量子回路をデザインすることである。回路デザインの原理は、
「基本回路を組み合わせること」
である。現在の計算機であれば、AND,XOR, OR, NOTなどが基本演算回路(ユニバーサル・ゲート回路)であるが、種類を減らそうと考えるのならNAND(あるいは半加算器)だけでもよい。そこで現在の計算機の基礎になっている基本演算回路(AND,XOR, OR, NOT)に対応した量子ゲート回路を構成できれば、現在の計算機の機能を実現できることになる。
効率を重視した古典的な可逆回路のための基本回路は、(Billiard Ball Computerの)フレドキンートフォリFredokin-Toffoli回路である。ドィチェDavid Deutshは、この古典回路の量子計算版となるゲート回路、ドィチェ・ゲート回路を考案し、
「任意の2n次元ヒルベルト空間上のユニタリ作用素はドッチェ・ゲート回路で表現可能である」