有機ゲルマニウム化学ーーヘテロ原子化学の新しいフロンティア
(神奈川大理) 竹内 敬人
ゲルマニウム化学、特に有機ゲルマニウム化学は、他の14族元素の有機化学に比べて、研究される機会が少なかった。NMRの世界でも、73Ge NMRは測定がもっとも困難な核種であり、従って最も研究されていない核であった。我々は73Ge NMRへの関心から有機ゲルマニウム化学に入り込んだが、殆どが未知の世界であるこの分野に魅せられて今日に至っている。
近年我々は、よく知られた陽イオンホスト(例えばcrown ether)と、ルイス酸性を持つゲルマニウムを陰イオン捕捉サイトとするheteroditopic hostの合成、構造、機能の研究を進めてきた。その間、陰イオンを捕捉する際に、ゲルマニウムが高配位(超原子価)構造を取るのではないか考え、高配位ゲルマニウム化合物の合成と構造を研究した。
図1 7配位三面冠四面体構造を持つゲルマニウム化合物の例
また、研究の原点であった73Ge NMRでは、固体高分解能測定を世界で最初に成功させ、さらに、高配位化合物の固体高分解能73Ge NMRの測定も報告した。
図2 6配位ゲルマニウム化合物の固体高分解能73Ge NMRスペクトル