第1回QuLiSシンポジウム

「ポストゲノム時代の情報生物学」



日時:2004年3月5日(金)13:00〜18:20
場所:理学部E002室


13:00〜14:20 松末 朋和(持田製薬株式会社 創薬研究所)

「構造ゲノム科学時代の戦略的創薬」

ポストゲノムの時代に突入し,医薬品の標的も順次明らかになり, ロボットを活用したHTSや,コンピュータスクリーニング技術はこれまで以上に重要な探索手段となるであろう。 コンピュータ活用によるシード化合物探索手法は,より効率的にシード化合物群を得るという意味で有望である。 また,リード化合物に対して誘導合成を実施する際,化合物をより速く合理的に最適化していくためには, 薬物標的タンパク質とリード化合物との複合体結晶構造を有しているほうがより効果的である。 今後短期間で明らかになる薬物標的の機能情報や構造情報をどのように創薬戦略に結びつけていくべきなのかをわかりやすく概説したいと考えている。
@ 創薬過程に沿っての探索効率化 
A ロボットを使用したHTSとそのライブラリの理想
B リード化合物を探索する・最適化する
以上の観点からの探索手法概論(コンピュータ活用,SBDDを中心に)を持田製薬の事例も織り交ぜながら探索研究の一端をご紹介させていただく。



14:20〜15:40 杉本 亜砂子(理化学研究所発生・再生科学総合研究センター)

「線虫のRNAi表現型プロファイルによる遺伝子クラスタリング」


われわれは線虫C. elegansをモデル系としてRNAi法による体系的な遺伝子機能破壊を行い, 発生過程に重要な機能を果たす遺伝子群の網羅的同定およびその機能解析を行っている。 RNAi表現型を記録する際には,発生過程に関する多面的な表現型情報をコンピュータ解析に適した形式で記述する方法をあらたに構築してデータベースを作成した。 具体的には,画像データに加えて,それぞれの表現型を複数の独立したパラメーター(細胞数・形態・各組織および器官分化等) についてあらかじめ定義した指標を用いて記録している。さらに,この<表現型プロファイル>を数値化して階層的クラスター分析を行なうことによって,表現型の類似度による遺伝子分類を試みている。 表現型プロファイルによる遺伝子クラスタリングは未知遺伝子の機能同定や遺伝子ネットワークの推測に有用であると考えられる。



15:40〜17:00 高井 貴子(東京大学情報理工学系研究科コンピュータ科学専攻)

「知識を扱うIT: 生物の機能を表現するオントロジー」

遺伝子発現プロフィール解析に代表されるようにゲノム研究の対象は遺伝子産物とその機能の関係の組織的な解析へと発展してきた。機能や表現型/疾病といった生物学における専門知識を計算機で解析するためには,オントロジーを含む知識処理研究が必要である。 オントロジーは,生物学の専門家が頭の中で行うデータの解釈の過程を,計算可能な形式に置き換えたものである。 オントロジーは遺伝子産物の機能予測等,機能を対象とする生物情報科学の諸問題の解決に必要であるだけでなく,配列から表現型/疾病までの幅広いゲノム情報を計算機上に再構築するための,統合環境の整備にも不可欠であると考えられている。講演では,細胞内シグナル伝達に関する機能を対象としたオントロジー開発を中心に,機能の計算方法について紹介する。



 
17:00〜18:20 北浦 和夫(産業技術総合研究所計算科学研究部門)

「タンパク質のab initio 量子化学計算」

私たちが開発したフラグメント分子軌道法(FMO)によると, 数千原子からなるタンパク質のab initio クオリティの計算が可能である。本発表では,FMO法の概要を紹介するとともに, villin HP36ポリペプチド(約600原子の系)の構造最適化と配座異性体の相対安定性の計算,リゾチームとリガンド複合体(約2000原子の系) の分子間相互作用の解析結果など,いくつかの適用例を紹介する。


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