MOLDAは,量子生命科学(QuLiS)プロジェクト研究センターの中心的推進者であった故吉田弘先生が学生の頃より改良を加え,
育てられてきた“分子構築ができる国産の分子表示ソフト”である。MOLDAは最近になってその表示能力が格段に向上し,
有機化合物分子がいかにもそこにあるかのように見える“バーチャルリアリティー空間”を表現できるようになった。
それによりMOLDAは,教育,アカデミック研究,創薬研究の各分野にあった改良がなされ,ナノスケールの“自然”をよりわかりやすく理解するための
“インターフェース”へと進化しようとしている。講演では,MOLDAの発展の歴史と今後の流れのひとつである創薬化学での利用について話をしたい。
創薬分野において,“いかにして他社の物真似でない,望む薬理活性の強い化合物の構造をデザインするか?”が重要な課題であり,
それができるかどうかが製薬企業の新薬創出の生命線である。そして,それを達成するためにメディシナルケミストは,
化合物とその相手となる標的蛋白質との相互関係をしっかりとイメージして,創造力豊かに新規な構造をデザインし,合成ルートを考え,
その化合物をつくる必要がある。また,効率化のためには蛋白質−リガンドのX線解析情報・計算化学から得た結果・構造−活性相関などもデザインに利用する必要がある。
近年PDB(Protein Data Bank)サイトに登録される蛋白質−リガンドの情報は日々急速に増加しており,これらの生きた情報を有効に活用しながら化合物のデザインを効率的に行うことは,いずれ創薬研究者に不可欠な方法となってゆくものと考えられる。それらを簡便に行うことのできる研究環境がますます必要となってくる。
創薬分野におけるMOLDAは,このような種々の要望に応えることのできる,分子−蛋白質複合体のバーチャルリアリティー空間とのインターフェースとなるソフトとして進化している。
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